クリニックで外来を行っていると「紹介状」を発行する機会は多々めぐってきます。
紹介状という言葉は一般的にもよく耳にする言葉ではありますが、特に医療事務になってから日が浅い方は、紹介状をもらうメリットがどこにあるのかを理解しましょう。
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紹介状とは何か
紹介状には診療の経過や行った検査の結果が書かれています。
紹介状のシステムは、クリニックから高度な医療を行っている総合病院まで、それぞれの役割を担当するという考え方に基づいています。(これを「紹介外来制」といいます。)
クリニックで診察する患者様の中には、病状の診断に「より精密な検査」を必要とすることがあります。
このとき、緊急でなければ初回の診療はクリニックで行い、精密検査や手術が必要な場合は大きな病院へ転送するといった、効率的に医療資源を分配することができるというわけです。
紹介状には何が書かれているの?
氏名・年齢・生年月日等の他、既往歴、病名、具体的な症状、紹介目的などが書かれています。
病名は診断がついていない場合もありますが、現在の主な症状、実施した検査の内容や投薬状況も記載されています。
また、検査結果は別紙にて同封されていたり、レントゲン撮影をされた場合は別途CD-Rが同封されていたりする場合もあります。
開封=無効ではありませんが、何が書かれているか気になっても開けないようにしてください。
別の記事でお話しした「御侍史」「御机下」「ご高診の程よろしくお願い申し上げます」などの、医療業界独特の丁寧な言い回しは、医療事務の身近なところでは、紹介状で使用されます。
紹介状の点数と算定
クリニック内でも口頭では紹介状といわれるケースが多いのですが、正式名称は診療情報提供書といいます。
ドクターが必要と考えるか、患者様の希望によるものかに係わらず、発行には「診療情報提供料」がかかります。公的保険が適用され、診察料と合算して請求されます。
診断書は診療情報提供書とは異なるので注意してください。
診療情報提供書の交付の保険点数は
B009 診療情報提供料(Ⅰ) 250点
ですので、3割負担の方で750円、初診料を合わせて計算すると1,710円の負担になります。※平成28年診療報酬点数に基づく。
患者様の希望によるセカンド・オピニオンのための情報提供は、
B010 診療情報提供料(Ⅱ) 500点
で算定できますが、治療計画、検査結果等の添付が必要です。算定時の注意はこちらに詳しいのでご確認ください。
何故紹介状が必要か
病状にかかわらず「とりあえず大きな病院なら安心」というお考えか病院を選んでいらっしゃる患者様が多い現状を変える必要がある為というのが大きな理由です。
「大きな病院なら専門的な設備もあって、万が一にも対応できる」
とお考えの方もいらっしゃいますが、病院にも「専門」がありますので、どんな病気にもパーフェクトに対応できるほど施設が整った病院はそうそうありません。
緊急ではなく、専門的な検査も必要ない患者様が「とりあえず」で病院へ行かれてしまうと、病院の機能はパンクしてしまい、
本来そういった医療が必要な患者様を診れなかったり手遅れになる可能性も考えられます。
そのため、クリニックのレベルで専門的診療の必要性を選別する必要があり、200床以上の病院では初診時に紹介状の提出を義務付けています。
紹介状をお持ちで無い場合は選定療養費が必要です(後述)
紹介状は重病な時だけ必要?
クリニックでは手に余る疾患だった場合、設備が整った病院・総合病院へ紹介状を発行するので間違いではありませんが、正確にはその可能性がある患者様を含むという表現が正しいでしょう。
ドクターから紹介状を出されたからといって、自分が重病だと早とちりしないようにしましょう。
転居やセカンドオピニオンでも必要
そのほかにも患者様のご依頼をいただいて作成される場合があります。
・転居などでかかりつけを変えたい
・患者様がセカンドオピニオンを希望している時
などがこれにあたります。
そのため紹介先は必ずしも病院とは限りません(病院・総合病院宛てであることが多いのですが。)
紹介状をもらうメリット
前述のように、クリニックで紹介状を発行することで患者様の情報を共有することができますので、
今までの診療を踏まえて今後の診療を受けることができるため、スムーズに転院できるというメリットがあります。
時間を減らす
病院、クリニックの共通事項ですが、初めての患者様(初診)はご来院が二度目以降(再診)の患者様に比べて時間がかかります。
紹介状がなしで診察を行う場合、患者様の病状について一から詳しく伺い、診断する時間が必要ですが、
クリニックで患者様の病状が明らかになっていれば、紹介状を通して引継ぎをスムーズに行うことができます。
患者様にとってもかかる時間を減らせるのはメリットです。
無駄な検査を減らす
「無駄な検査を減らす」というメリットもあります。
通常初診時の患者様には疑われる疾患に対して検査を行いますが、
クリニックで既に検査を行っている場合はその内容が紹介状に書かれているので、検査の重複を避けることができます。
検査が重複してしまうとそれだけ費用もかかりますし、採血など痛みを伴う検査が苦手という方も多いともいますので、検査が少ないに越したことはありません。
診察料が安くなる
紹介状なしで200床以上の病院を受診する場合、選定療養費を請求されることがあります。
選定療養費は自費診療のため、病院によってかかる費用が異なります。都内有名病院ですと5,400円(税込)ですが、もう少し安価な病院もあります。(東大病院は8,100円・・・)
詳しくは記載されているページのリンクを貼っておくので確認してください。(都内の病院のみで申し訳ありあません)
東大病院、 虎ノ門病院、聖路加国際病院、東京都済生会中央病院、慈恵医大
ただし、下記の方は選定療養費の対象外です。
生活保護法の医療扶助の対象となっている者
特定の疾患や障害などで、各種の公費負担を受給されている者
緊急その他やむをえない場合(救急車での搬送など)