「勤務中のケガは労災になるので健康保険は使えません」
医療事務として働く方の多くは、このセリフを言ったことがあると思います。
「仕事中のケガは労災」ということは、医療事務であればご存知だと思いますが、実際どういう流れで労災の適用となるのか、詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。
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労災保険って何?
労災とは、「仕事が原因の病気やケガに対して、国から保険金の支給を受けることができる制度」のことです。
仕事が原因のケガや病気は、「労働災害」と認められれば、その治療には労災保険制度が使われます。
従業員は必ず加入している
労災保険の保険料を支払っているのは、所属している会社です。医療事務の方であれば、所属している病院またはクリニックで加入しています。
従業員を1名でも雇用している場合、雇い主は必ず労災保険に加入しなければなりません。
労働者が加入のための手続きをする必要はありませんし、保険料を支払う必要もありません。
雇用形態(正社員、パート、日雇い労働など)にかかわらず、雇用されたら自動的に加入しています。
会社が払っていなかったら?
ある程度の規模がある会社に所属している方は問題ないとして、個人経営のクリニックのように、小規模な会社や組織では、労災保険料を支払っていないことも考えられます。
管理がずさんであったり、そもそも労災保険の加入は義務であることを、知らない可能性すらあります。
もしそうだとしても安心してください。たとえ会社が労災保険を納めていなくても、保険金を国から受け取ることができます。
※会社は過去にさかのぼって、国から保険料を徴収されます。
ただし例外はある
「従業員が5人未満の個人経営の農業・水産業」は労災保険が適用されないなど、一部の事業には労災が適用となりません。
かなり限られた業種ですので、「例外がある程度」に考えてください。
どんな場合に労災と認められるのか
仕事中負ったケガは基本的に労災として認められます。
クリニック内でカルテを取りに行くとき転んでケガをした、通勤途中に自転車とぶつかっってケガをしたなどのご状況は、症状に関係なく労災認定されます。
看護師だと、「針刺し」のトラブルなども労災の対象です。
イレギュラーに発生した勤務中のケガは、労災が認められる典型的なケースです。
働きすぎでうつ病でも労災?
認められる可能性はありますが、「仕事が原因であること」を明確にしなければなりませんが、仕事との因果関係を示す医師の診断書があれば、認められる可能性は十分にあります。
紙カルテ運びで腰痛になった、電子カルテの操作で腱鞘炎になったといったケースも同様です。
通勤途中の事故
通勤中の事故も労災の対象です。
満員電車から降りる際に転んだ、駅の階段を踏み外して落ちたなどが考えられますが、申請した通勤経路を逸脱すると、寄り道と扱われてしまう場合もあります。
寄り道とみなされると認定されない場合もあります。
申請して労災と認められると・・・
労災として認められると、治療費や休業している間の給与が支払われます。
治療費は全額、休業給付は休んで4日目以降の給与の8割(正確にはボーナスなどの特別給与を除いて計算した額の8割)が支給されます。
大きなケガなど、1年半が経過しても治らず、引き続き重症であれば、労災保険から傷病年金が支給されたり、後遺症がある場合の給付などもありますが、
ざっくり、ケガの治療費と、会社を休んでしまった間の給料の8割が支給されるということがわかれば、医療事務の対応としては十分ではないでしょうか。
まとめ
労災の概要をお話ししましたがいかがだったでしょうか。
結局「仕事中のケガ=労災」だけ覚えればよいような気もしますが、
療事務の仕事をおこなうのであれば、「この場合は労災なのか?それとも普通の診療なのか」といった質問にも、答えられたほうが頼れる医療事務になれそうです。
勤めているクリニックが、労災保険医療機関ではないこともありますので、患者様への対応方法はクリニックの院内ルールに従ってください。