臨機応変の対応と業務マニュアルの意義

クリニックには業務マニュアルがないことが多く、初めて伺うクリニックでは、まず業務整理から入ることが多いのですが、

なぜほとんどマニュアルがないのかを伺うと、多くの院長先生は「医療事務はマニュアル通りにはいかない仕事」というお答えをいただきます。

医療事務でなくても、人と接する仕事であれば想定外のことは出てきますが、医療事務が特別マニュアルどおりにいかない仕事だとも思えないのですが、このあたりをどう考えたらよいでしょうか?

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臨機応変の対応は好印象だが基礎が必要

業務マニュアルがない、もしくは普段使用されていないクリニックでは、臨機応変な対応が求められます。

確かに臨機応変に患者様対応にあたり、医師や看護師にとってタイミングよく効率的に情報共有を行うことができる医療事務は、クリニックではありがたい存在ですし、

所属している全てのスタッフがその場で最適な対応を行うことができれば、とても効率的で患者様からの印象も良いはずです。

基礎があってこそ

スタッフへ臨機応変に対応させることは、一見良いことだらけに見えますが、全ての業務を把握しきれていなかったり、仕事の視野が狭かったりすると、

臨機応変に対応したつもりが、見当違いな対応になってしまうこともあります。

 

私が考えるに、最低限医師や看護師のクリニック内での動きを把握しており、患者様への高い接遇スキルをお持ちでないと、臨機応変な対応は諸刃の剣になってしまいます。

もちろん経験年数が上がり、失敗から学べばこのスキルもあがってきますが、次のようなデメリットも考えられます。

臨機応変のデメリット

スタッフに臨機応変な対応ばかりを求めるデメリットは2つ考えられます。

離職率が高くなる

臨機応変な対応を求めると、特に経験の浅いスタッフは、何をしたら良いのかもわからないままに、「習うより慣れろ」の教育を受けることになります。

私が見てきた限りでは、接客業の経験が長い方の中には小さい失敗で済む方がいる一方で、多くの方は何度も大きな失敗をしてしまいます。

 

最悪の場合、医療機関では1つの失敗が患者様の命に関わるため、失敗に寛容な医療機関は珍しく、大きな失敗が続けば厳しく叱責されるため、どうしても離職率が高くなります。

個人のスキルに依存する

臨機応変な対応は、そのクリニックでの医療事務経験が長い方がもっとも良いパフォーマンスを発揮します。

何人も所属が長いスタッフがいる場合は別ですが、離職率が高い中で、経験豊富なスタッフが辞めてしまうと、指標がなくなり、新人スタッフの仕事の質が担保されません。

マニュアルを作る

スタッフに臨機応変な対応を求めているクリニックでは、どなたかがベースを作らない限り、マニュアルを作成するのは難しいと思いますし、作成されたものが運用されたとしてもおそらく短期間です。

クリニックにおけるマニュアルの作り方は、コンサルティングを行っている医療機関様に提供しているノウハウですが、2つほどポイントをお話したいと思います。

ルーティーン業務から入る

「業務をマニュアル化できない」とおっしゃる気持ちは良くわかります。

また、マニュアル化を院長先生が指示しても、現場から反発を招くこともよくあります。

 

マニュアル化できない理由は、全ての業務を一気にマニュアルしようとしてしまい、膨大な仕事になってしまうからです。

マニュアルを作成する際にポイントになるのが、「ルーティーン業務」です。

仕事の範囲が広いとはいえ、医療事務にも出勤から退勤までの決まった流れがあるはずです。それを箇条書きにしてみましょう。この時点ではマニュアルというより「TODOリスト」に近いものがありますが、

先にリスト化した上で、必要な項目に解説を加えていくようにします。

いつのルーティーン業務なのかを明らかにする

毎日のルーティーン業務のマニュアル作成が終わったら、毎月のルーティーン業務、毎年のルーティーン業務に関してもリスト化しましょう。

「毎年」のものは、毎月ではないけれど、3ヶ月に1回、半年に1回、年に1回など、毎日と毎月以外のもので構成すると良いと思います。

マニュアルを使用して教える

もう1つのポイントはマニュアルを使用して教えるように指導することです。

せっかくマニュアルを作成してもほとんど使用されないケースをよくお見かけしますが、これはマニュアルを使用して教えていないことが問題だと考えます。

マニュアルを使用して教えられたスタッフは、自分が指導する際もマニュアルを使用します。

指導の際は、これが共通のレジュメとなり、記載内容が現状と異なっていたり、解説が足りない内容を書き足すなどの更新作業が、指導するスタッフの仕事となるのです。

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