求人情報には様々な労働条件が書かれています。
私はクライアントの商圏にあるクリニックの求人情報を常にチェックしていますが、本当のことが書かれているのか判断が難しい項目をお見かけすることもあります。
本来であれば記載されている労働条件と実態が一致しなければいけませんが、「スタッフ同士の仲が良い」「院内の雰囲気が良い」「風通しが良い」など、クリニックの主観的な内容に関しては判断するのが難しいというのが現状です。
これらの「数字では表すことのできない条件」は、最終的には働いてみなければわかりません。
しかし、面接中の質問でいわゆる「ブラック」であるかどうかを見抜くポイントは存在します。
医療事務未経験の場合はまず経験を積むことが最優先ですので、労働条件よりまずは働いてみることが先決ですが、「できることなら少しでも働きやすいクリニックで働きたい」と考えていらっしゃる方が多数派であることは明白ですので、今回はその見抜き方をお教えします。
すでにクリニックへ就職されている方は下記の記事をご参照ください。
Contents
試用期間の後の給与をお教えいただけませんか?
試用期間があるクリニックが全てブラックであるという意味ではありません。
最近は多数のクリニックが「試用期間」を導入しています。
定義はクリニックごとに若干異なるかもしれませんが、「正式に雇用する前に決められた期間現場で働かせ、今までの経験と働き方を総合的に判断し雇用する」というものです。
クリニック側のメリットは、「面接の際の見込み違いで、現場レベルで職務を全うできるだけのスキルがない方を雇用してしまうリスクを減らすことができる。」というところにあります。
雇用される側にも「イメージと現実のギャップを埋める」というメリットがあり、働いてみてから「こんなはずじゃなかった」と思ったときは短期間で辞めることができ、就業先をじっくり検討することができます。
試用期間の扱い問題がある
しかしこの「試用期間」が問題になるケースがあります。
「試用期間中の働き方を評価して最終的な給与を決める」という方式がとられている場合、明確な基準が設定されていないと、スキルのレベルについて本人とクリニック側の認識が大きく異なってしまい、給与額でお互いの認識がずれてしまう可能性が高くなります。
具体的な事案は複雑になってしまう場合が多いので、単純な形にしてご説明します。
それぞれの認識が
新人:「前のクリニックの経験を生かし、今のクリニックでも一通り仕事ができるようになった」
採用側:「まだまだミスも多く、現時点では経験者採用のレベルにない」
となっていたとします。
このスタッフが経験者であり、経験者枠で応募していたとすると、求人情報と実際の給与額が異なってしまいます。
試用期間があることは通常求人票に書かれていますが、試用期間後の給与が最低幾らになるかという点は確認しておいた方が良いでしょう。
みなし残業以外の残業時間はどのくらいありますか?
医療事務の求人を拝見していると最近良く目に付くのが、「みなし残業」が含まれているケースです。
みなし残業とは「残業代を定めた時間分先払いし、残業時間が定めた時間を下回ってもその時間分は支給します」というルールです。
概算ではありますが、給与が20万円の医療事務の場合、残業の単価は1,500円程度ですので、 20時間残業すると、額面の給与は20万+3万で合計23万円になります。
これを「給与23万円(20時間分の残業を含む)」と表記したとします。
みなし残業導入のメリット
導入するクリニック側のメリットは「給与額を高く見せることができる」ということです。また、これはインターネットの求人で給与額を設定して検索される方の対策にもなります。
上記の例で言えば、毎月20時間残業していれば給与額は同じなのですが、20万円より23万円の方が高く見えるということです。
もし受けているクリニックにこのみなし残業が設定されていたら、みなし残業で設定されている時間以上の残業がどのくらいあるのかを確認しましょう。
この質問をすると、ほとんどの場合「月によって異なる」という回答をいただくことになるでしょう。
その場合はすかさず「では繁忙期の場合はいかがですか?」と質問しましょう。
みなし残業とは、設定以上に残業した場合はその残業時間に基づいて別途残業代を支払わなければなりません。
上記の例で言えば、月に23時間残業をした際は、3時間分の残業代が別途支給されるはずです。
繁忙期にみなし残業以上の残業がないというのは考えにくいので、繁忙期でも設定の残業時間内でおさまるという答えであれば、ブラックの要素はあると考えられます。
労働条件について質問しても問題ないか
残業はどのくらいあるか、有給休暇はとれるのか、などといった「労働条件」に関する質問は必要最低限にとどめておくべきというのは以前お話したと思います。
確かに必要以上に質問すると良い印象にならないかもしれませんが、上記で挙げた点はクリニック側がルールを勘違いしているケースもあり、トラブルを招きやすい項目でもあります。
「試用期間」「みなし残業」が設定されている場合は、面接の最後に質問しておくのが無難です。
もしこの程度の質問で内定が貰えないのであれば、そのクリニックは明らかに「ブラック」ですので、むしろ内定をもらわずに良かったと考えるべきです。
<参考>
働く人のための ブラック企業被害対策Q&A: 知っておきたい66の法律知識