私は現在は現場に入ってスタッフさんへ指示を行うことはありませんが、事務長時代は新人医療事務が入職するとよく仕事を教えていました。
院長先生からヒヤリングを行っていると、「スタッフが新人をいじめてしまって辞めてしまうのをなんとかしたい」というご相談をいただくことがありますが、
指導をしている方とされている方で主張は大きく異なります。
これはスタッフがいつかないクリニックでは1つの原因となりえますが、マネジメント職の方はどのような指示をしているか1度確認して異見るのも良いかもしれません。
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「何でも聞いて」は言葉通りではない
特に仕事を始めたばかりで右も左もわからない状態では、先輩社員や指導係の方に確認をしながら進めなければなりません。
よく医療事務の経歴が浅い方から頂く相談に、
先輩社員からは「わからないことがあったら何でも聞いて」と言われたので聞いていたら、機嫌が悪くなり「何でも聞いてたら話にならない」と言われ困っている
というようなご相談があります。
自分で判断しろと言われたのに・・・
ここからは私のフィクションですが、おそらくこのような状態が続いていると以下のようなシナリオになります。
新人スタッフは、できるだけ先輩社員への質問回数を減らします。
質問する時は、先輩社員の顔色を伺いながら、できるだけタイミングを計って行うため中々仕事が進みません。
そこで、今まで行ってきたことを踏まえて、自分で判断しようと頑張ります。1度や2度はそれで乗り切れますが、ある時判断を間違えてミスしてしまいます。
すると先輩社員からはこんな言葉が飛んできます。
「何で聞きにに来てくれなかったの?」
当然先輩社員からは指導を受けます。
しかし、この新人さんは、どういうときに質問しなければいけなくて、どういうときは自分で判断して良いのかがわからない為、失敗が恐くなりキャリアを積む前に辞めてしまいます。
そして思うのです。医療事務は自分には合わない・・・と。
教える側の指導方法
前項でのフィクションのシナリオが発生してしまう原因は教える側にフォーカスされることが多いのですが、私は教える側にも教わる側にも改善点があると考えます。
まずは教える側の視点から上記の状況を見てみましょう。
教育的指導はほどほどに
医療事務の場合は仕事の範囲が広く、始めのうちは使用している言葉の解説から入らなければならない場合がほとんどですので、人を育てるのに非常に手間がかかります。
医療業界はミスが許されませんので、ミスが恐くなるのは当然です。
あくまで私の考えですが、最近の若い世代の方はメンタル的に強くない方が多いので、教える方は指導のつもりでも、指導を受ける方にとってはそうではないという状況が十分に考えられるということ念頭に指導するようにしましょう。
失敗しても大きな問題にならないよう配慮する
「ではどうしたら良いか」ですが、私は失敗しても大きな問題にならないようにしながら、失敗を体験して覚えてもらう方法が良いのではないかと考えます。
そもそも、新人スタッフを教育する目的は、道に転がっている石を取り除いてやるのではなく、どこに石があるかを明確に伝え、一人で歩けるようになるようにすることです。
覚えがいいかどうかは個人のポテンシャルに左右されますが、あきらめずに育てていけば、自分で考えられる人材に育てていくことができます。
デメリットを申し上げると、手間がかかる割には育つスピードは決して早くないということですが、厳しく指導しすぎることで辞めてしまうスタッフが続出するよりずっと将来性があるのではないでしょうか。
教わる側の教わり方
スタッフが成熟しないのは指導方法が悪い
新人スタッフの実力が上がらないと、まず槍玉にあがるのは指導方法ですが、教わる側に問題はないのでしょうか。
態度に気をつける
教えてもらっている身でありながら、教え方が悪いと批判したり、悪態をつくようではいけません。
批判が癖になってしまっていると思われる方もいらっしゃいますので、そういう方は意識して直していくように心がけましょう。
いちばん困るのが考えないタイプ
「新人スタッフの実力が上がらない」原因は教わる側にも潜んでいます。
その代表格が考えないいわゆる「思考停止型」
ベルトコンベアーのように、マニュアルに従った仕事はできますが、少しでもマニュアルから外れてしまったり、自分が行ったことのない仕事、経験が浅い仕事に関しては、自分で考えたり、調べたりすることができない方です。
このような方は、先輩スタッフにに聞かなければ仕事を全く進めることができませんし、指導の内容を予想することさえできません。
自覚がない
このようなスタッフは、本人には全くその意識がないので「何故自分はちゃんと仕事をしているのに怒られるんだろう」という疑問が払拭できません。
このタイプには質問の仕方から教える必要があります。
質問の仕方
質問して怒られるということは、オープンクエスチョンとクローズド・クエスチョンの使い分けができていません。
1つ例を挙げてご説明しましょう。
ある日新人スタッフが紹介状を患者様から預かったとします。
クリニックでは普段紹介状を持参される患者様は多くはありませんので、新人スタッフにとっては今回がはじめてのケースです。
このとき、
①「この紹介状はどうしたらいいですか?」と聞くのと、
②「この紹介状はカルテに入れてドクターにまわしますか?」と聞く(正確には確認)するのとどちらが正解でしょうか。
答える方の身になって考える
上記の例の場合、答えは②です。
②はクローズド・クエスチョンと呼ばれる質問方法で、原則 Yes or No で答えることができる質問方法です。
この場面は診療中ですので、それぞれに仕事をしている中で質問を行い、先輩社員には答えをもらう必要があります。
時間がない中で答えるのであれば、②の質問の方が答えやすいというのはわかると思います。