レセプトの時期を中心に医療事務の残業は多くなります。
医療事務にとって、どこで働いてもほぼ共通の認識かとは思いますが、私は常々この考え方を変えるべきだとお話しています。
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医療事務の残業時間は院内で1番長い
世の中残業を減らす方向に動いていますが、医療事務の業務に残業はつきものです。
クリニックによっては残業を減らすべく様々な工夫をしているところもありますが、(病院でも同じだと思います。)医師、看護師、放射線技師など、他の職種を合わせても、残業時間はクリニック内で1番長い職種と言えます。
参考:『 医療事務の残業時間を減らす早朝出勤のメリット』
残業が多い理由
電子カルテやレセプトコンピューターがない、紙と鉛筆と電卓を使用してレセプトを作成していた時代と比較すると、残業時間は短くなっているといわれていますが、
私個人としては、進歩の度合いから考えるとまだまだ医療事務の残業は多い(工夫が足りない)と感じています。
特にレセプト点検ソフトがどんどん優秀になっているにも関わらず残業が減らない状況は、「仕事のやり方が間違っている」と考えた方がしっくりきます。
固定概念にとらわれている
診療報酬は2年に1回点数や内容が変更されますが、その多くがマイナーチェンジで、根本からフルモデルチェンジするわけではありません。
10年医療事務のお仕事から離れてしまうと復帰は変かもしれませんが、4,5年のブランクであれば他の職種に比べて復帰しやすい傾向にあります。
逆に言うとルールが大きく変わらないので、働き方も意識しなければ変わらない傾向にあります。
残業の多くはレセプト
ルールも働き方も大きく変わらないと、これらに変化をもたらすためには、何かしらの起爆剤が必要です。
そもそも、レセプト作業の目的は
査定や返戻がない(少ない)レセプトを作成すること
ですから、この目的を見据えて業務の改善を行う必要があります。
初めて伺うクリニックの院長先生とお話をしていると、「レセプト期間は毎日残業3時間で残業代が…」という話を聞きますが、
現在の進歩したテクノロジーを活用すれば、レセプトにかかる時間は減らせるはずです。
時間をかけるより結果を出せばよいのですから、結果が出やすい状況を考えてみましょう。
極論を言えば、レセプト点検に20時間かけても査定や返戻が多ければ意味がありません。
残業は「悪」であると認識しよう
私は、クライアントのクリニック様に、「残業を減らしましょう」という提案を繰り返し行います。
クリニックにとって革新的すぎるやり方はスタッフの反感を招きますので、少しずつ改善していくことが理想ですが、少しで止めず、やり続ける意思が必要です。
長時間の残業は悪循環を生む
若い方はピンとこないかもしれませんが、30歳を過ぎるとだんだんに身体能力が低下します。長時間労働を続けていると休まらなくなり、集中力が低下しミスが増えます。
ミスが増えれば評価が下がってしまい、給料が上がらない悪循環に陥ります。
そのうち、仕事がうまくいかないことでストレスがたまり、ストレス解消のためにお酒や趣味に時間をとるようになるでしょう。
ただでさえ帰宅時間が遅いのに、趣味にとられる時間も多くなるのですから、睡眠時間が減ってさらに寝不足になります。
長時間の残業はメンタルをむしばむ
特に医療事務は、本人たちも、クリニック内の他の職種の方々からも、残業しなければならない固定概念をいだかれています。
最初は「そういうものか」と思って働いていても、疲れがたまってくるとこれがたまってくると、前述のような悪循環に陥り退職に至ります。
サービス残業ではなく、残業代が支給されていたとしても、離職率が低くならない原因の1つでもあり、なおかつ改善できる項目でもあります。
プライベートにも影響は及ぶ
長時間残業が当たり前になっていると、仕事の後に予定を入れることもできず、交友関係が広がりません。
時間をやりくりして、疲れていても無理やり遊ぶ方もいらっしゃるでしょうが、だんだんとこの気力もなくなってきてしまいます。
残業なしで定時に退社できる日を増やし、残業を行ったとしても2時間以内に収めるを実現していけば、プライベートな時間を確保できるようになります。
多少趣味の時間をとっても睡眠時間をしっかり確保できるでしょうし、ストレスコントロールができればパフォーマンスも上がります。
それでも残る人はいる
クリニックで院長の先生のお気に入りとなるべく、医療事務の業務外と思われる仕事を必死でやり、長時間残業して身を削ってでも出世したいという方には何もいいません。
私は立場上努力が実るよう応援することしかできませんが、そのような方はご自身の信念に基づいて頑張ってください。
残業時間を減らすためにはどうしたら良いか?
ひと昔前は使い捨てのようにスタッフを扱う医療機関が一般的だったように思います。
医療機関は、その規模に関わらず医師を頂点とするヒエラルキーな世界ですが、安定したクリニックの運営を考えると、スタッフが定着しやすい環境を作ることは急務です。
この中で改善しやすく効果も現れやすいのが残業へのアプローチです。
自助努力よる残業時間の削減
院長先生とお話をしていると、「残業を減らすよう指導している」とお話をいただくことがあります。
指導しないよりは良いのですが、医療事務も残業したくてしているわけではなく、残業に「なってしまう」のですから、「指導」だけして、あとは医療事務の自助努力に任せるだけでは、状況は一向に改善しません。
そのため、実現できる労働環境を整える必要があります。
評価制度を改善する
残業時間を減らすよう指導するのはもちろんですが、労働環境を整える一環として、評価制度に残業時間の項目を加えるのはいかがでしょうか。
長時間働いている医療事務を評価するのではなく、残業が少ない医療事務に加点するよう評価基準を変えるのは勇気がいることですが、評価基準を変えることは、固定概念をとりはらい、新しい働き方を提案する材料になります。
若者は「根性がない」「すぐ辞めてしまう」などというお話もよく耳にしますし、実際その側面もあると思いますが、
最低限の労力で最大の効果が出るような方法を考え、実践、検証して生産性を高めるための方法は、スタッフの自助努力を良い方向へ導く「評価制度」にあると考えています。
まずは本人の意識が必要
医療事務の残業時間を減らすには、まず本人の意識が必要です。
本人の意識が変わらなければ、残業時間が減ることはありえないでしょう。
残業の多いクリニックは、環境を整えない院長先生が悪い
などと考えている医療事務の方がいらっしゃったら、その考えは間違いです。
即刻考えを改めることをお勧めします。
まずはどうしたら残業時間が減るかを考え、院長先生に提案し、実行・検証を経て徐々に改善していく意識が必要です。